【大学入試小論文】弘前大学農学生命科学部(2024年度)の小論文解答例「食料自給率」の改題です。
(2)上述の問1の内容を踏まえて、今後の我が国における食料自給率はどのような展開を示していくことが望ましいか、あなたの考えとその根拠について述べなさい。(400字以内)
【改題】日本の農産物は圧倒的に輸出よりも輸入が多く、他の国に依存してしまっている。この現状において、あなたの考えを述べなさい。
日本の食料自給率についての小論文解答例
日本の農産物貿易において、輸出額よりも輸入額が圧倒的に多い現状が続いている。農林水産省の統計によれば、2022年の農産物輸入額は約10兆円である一方、輸出額は約1兆円にとどまっており、日本は多くの農産物を海外に依存していることがわかる。これに対して他の主要国では、輸入額と輸出額が比較的均衡しているか、輸出が輸入を上回る場合も多い。日本でこのような状況が見られる理由の一つとして、地形的な制約が挙げられる。国土の約7割が山地であり、平地が限られる日本では、大規模な農地の確保が難しいため、農産物の生産に不利な条件が存在する。
しかし、輸入への依存が高いことは多くのリスクを伴う。例えば、国際市場における供給や価格の変動、または輸入先国の輸出規制などの影響を受けやすい。また、国内の農業人口が減少し続けている現状では、輸入が増えれば増えるほど国内の農業基盤がさらに弱体化する可能性がある。この問題を解決するためには、輸入に依存する現状を見直し、輸出を拡大しつつ国内農業の基盤を強化する必要がある。
まず、国内農業を支援する仕組みを構築することが重要である。その具体策として、農業従事者の負担軽減と効率化を図る政策が挙げられる。例えば、政府が農作物収穫用の機械を共同利用できる仕組みを整備することで、個々の農家のコスト負担を減らし、作業効率を向上させることができる。また、次世代への農業教育も欠かせない。学校教育において農業体験プログラムを積極的に導入し、子どもたちに農業への興味を持たせることで、将来的な担い手を育成することが期待される。
さらに、輸出を拡大するためには各国の需要に応じた戦略を立てる必要がある。アジア地域では品質の高い日本産果物の需要が増加しており、特に台湾や香港では日本産のリンゴやイチゴが高値で取引されている。また、ヨーロッパでは日本食ブームの影響で緑茶や日本酒の需要が拡大している。これらの需要に対応するため、各国で注目される日本産品の市場調査を徹底し、それに基づいた輸出促進策を講じることが重要である。加えて、コロナ禍を経て食生活が変化する中、健康志向や簡便さを重視した新たな商品開発も鍵となる。例えば、栄養価の高い日本産農産物を使った加工食品を開発し、輸出品として展開することが考えられる。
これらの施策を通じて、日本の農業の持続可能性を高めると同時に、貿易額のバランスを改善することができるだろう。日本の農業は地形や人口減少といった課題を抱えているが、国内支援策と国際市場に対応した輸出戦略を組み合わせることで、新たな成長の可能性を見いだすことができる。農業の持続可能な発展は、経済だけでなく食料安全保障や地域活性化にも寄与するものであり、国家として優先的に取り組むべき課題である。
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