【高校倫理】イスラーム教の教えについてまとめています。
イスラーム成立以前
イスラーム成立以前のアラビア半島の宗教は、一般に神教で、人々は先祖伝来の部族の神々を信じていた。なかでもムハンマドが生まれたメッカは、伝統的な神々をまつる聖地でもあり、巨石を御神体として崇める偶像崇拝が行われていた。
絵画・彫刻・自然物などの可視的対象物を信仰の対象として崇拝・礼拝すること。
ムハンマドの神の啓示
メッカの名門の商家に生まれたムハンマドは、幼いころに孤児とり、叔父に育てられた。誠実な商人として各地で活動し、ユダヤ教やキリスト教の信仰に触れ、宗教的な問題を深く考えるようになった。
ムハンマドは40歳の頃、メッカ近郊のヒラー山の洞窟で瞑想していたとき、「起きて警告せよ」という神の声を聞いた。その後も次々と神の啓示が下り、ムハンマドは妻に励まされながら、神の使徒・預言者としての自覚を深め、人々に教えを説き始めた。
アッラー
イスラームにおいて神はアッラーとよばれ、宇宙の創造主にして全知全能・唯一絶対の神であり、世界の終わりの日には「最後の審判」を行う。アッラーは人格神でもあり、人間的な感情も持つ。正しい人にはよい報い・悪人には罰を与える正義の神であり、悔い改める人には赦しを与える慈悲深い神でもある。
アッラーが絶対的な存在であることから、次のことが帰結する。
- アッラー以外に神はなく、他の何者も神格化し崇めることはできない。→「神の子」のような存在も認めない。イスラームでは、イエスは「神の子」ではなく、ムハンマドに先立つ預言者の1人とされている。
- アッラーを偶像で表現することはできない。偶像崇拝は一切認めない。
- アッラーの前では、民族や部族の違い、貧富や身分の差などにかかわりなく、信徒はすべて平等である。→神と信徒を仲介する特別な聖職者(祭司など)もいない。
預言者
イスラームではムハンマドを、『旧約聖書』のアブラハムやモーゼ、キリスト教のイエスなどに続く、最後にして最大の預言者であると位置づける。
クルアーン
クルアーン(コーラン)はイスラームの聖典であり、ムハンマドがアッラーから受けた啓示を、ムハンマドの死後に弟子たちがまとめたものである。
<クルアーン(コーラン)の特徴>
- 旧約聖書や『新約聖書の一部も神の啓示を記した聖典(啓典)としている。「クルアーン」こそ神による最後の、かつ完全な啓示とされる。
- 教義や宗教的な戒律とともに、日常的な社会生活の規則も記されている。
- クルアーンは本来「読誦」を意味し、声に出して読むものとされている。
スンナとシャリーア
ムハンマドの言行の伝承にもとづく慣行・行動規範をスンナという。また、クルアーンやスンナにもとづいて作られたイスラームの法体系をシャリーア (イスラーム法)という。
シャリーアには、宗教的儀礼はもちろん、結婚や家族関係など日常生活全般の規則、刑罰・訴訟や行政法・国際法まで幅広い規定がある。
六信・五行
ムスリム(イスラム教徒)は六信と呼ばれる6つのことからを信じ、神への奉仕として五行とよばれる5つの義務を実践しなければならない。
<六信>
- アッラー…唯一絶対の神
- 天使…ムハンマドに神からの啓示を伝えた天使。
- 聖典(啓典)…「クルアーン」が中心。他に『旧約聖書』などの一部。
- 預言者…アダム、アブラハム、モーセ、イエスなど。最後にムハンマド。
- 来世…最後の審判のあとの世界。人間は天国と地獄に振り分けられる。
- 天命…この世界の出来事はすべてアッラーに定められたことである。
<五行>
- 信仰告白(シャハーダ)…「アッラーは唯一の神、ムハンマドは神の使徒」と唱える。
- 礼拝(サラート)…聖地メッカの方向へ、1日に5回礼拝する。
- 断念(サウム・シャーム)…ラマダーン月(イスラーム審の審9月)に、夜明ら日没まで飲食をしない。
- 喜捨(ザカート)…賞者の救済にあてる宗教的な救貧税。
- 巡礼(ハッジ)テン一生に一度は聖地メッカを訪れるものとされる。
コメント