【高校政治経済】行政機能の拡大と弊害のポイント
行政機能の拡大
官僚制(ビューロクラシー)の発達があり、行政官公庁の巨大化、業務の複雑化・専門化に伴ない、各分野で専門知識をもった専門技術官僚(テクノクラート)がこれを担った。
行政権の優位
- 行政主導の法案作成…日本の法律案は、議員提出の法案(議員立法)よりも山の法案(内閣立法)のほうが多い。また実質的には関連省庁の官僚が法案作成者となっている。
- 委任立法の増加…法律では大枠のみを決めて、実質的・具体的な方の政令(命令)・規則にゆだねる委任立法が増えた。
行政主導の問題点
- 官僚制の発達と行政権の優位…官僚主義や専門的・技術的知識を背景とした専門技術官僚支配(テクノクラシー)の危険性。また、官僚が特定の利益団体と結んで汚職や政治腐敗を引き起こすなど、国民の政治不信を招いている。
- 族議員…ある特定の省庁の政策・利益に精通し、政策決定において、その分野においては決定的な影響力を及ぼす議員。利益誘導型の政治を行う。また、全体の利益よりもその分野・業界の利益を優先する傾向がある。族議員主導で政策が進むと、内閣のリーダーシップが失われる。
- 天下りへの批判…天下りとは一部の公務員(官僚)が早期退職し、特殊法人や民間企業に再就職すること。さらに民間企業に再就職をくり返すことは「わたり」と呼ばれ強い批判がある。
行政機関の民主化
公務員制度の近代化で、大日本帝国憲法下の公務員は「天皇の官吏」として天皇に対する奉仕者であったが、日本国憲法により民主的な公務員制度ができた。
- 公務員の中立性…憲法第15条では、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利」であり、「すべて公務員は、全体の奉仕者でも一部の奉仕者ではない」と定めている。
- 公務員と其本的人権…公務員も一般国民と同じように基本的人権が保障されているが、国民の公僕としての立場と政治的中立・不偏不党性を確保するために、労働三権や政治活動の自由については制限されている。また、公務員の規律を正すため国家公務員倫理法が制定された。
- 人事院…公務員についての民主的で能率的な人事行政を担当する機関。内閣からある程度独立しており、公務員の労働条件についての勧告権をもつ。
行政委員会
行政機能の拡大や複雑化に対応して設けられた合議制の行政機関。政治的中立性の確保、利害の調整、専門知識の導入、特殊な行政の担当なとを目的とする。内閣からある程度の独立性を認められ、規則制定権(準立法的機能) と裁決権(準司法的機能)をもつ。
国民の行政監視
行政改革と行政の民主化には、国民の行政監視が欠かせない。そのため、情報公開法の整備、行政監察官(オンブズマン、オンブズパーソン)制度の導入、行政相談・苦情処理の強化などが望まれている。
行政改革の推進
- 中央省庁等改革関連法…1998年に成立。これに基づき 2001年、1府12省庁体制に再編された。
- 副大臣・政務官制度の導入…従来の政務次官制度を廃止して導入された。副大臣は政策全般にわたって大臣を補佐し、大臣不在の場合は、その職務を代行する。大臣政務官は特定の政策について大臣の補佐をする。
- 民営化による組織の縮小…1980年代の三公社(JR、NTT、JT)の民営化などにはじまり、行政をスリム化しようという試みが進んだ。1996年に独立行政法人制度が導入された。2000年代には特殊法人の統廃合、郵政民営化、公務員数の削減なども進んだ。
地方分権の推進
地方への権限移譲・財源移譲を進めてきた。
- 行政手続法…1993年に成立。行政運営の公正の確保と透明性の向上をはかる。
行政委員会
行政委員会は、公正で中立的な行政の実現を目的として設置される、専門的な知識を要する特定の行政分野に対応する機関の総称である。行政機能に加えて規制を制定する準立法的機能や裁決を下す準司法的機能も有している。
公正取引委員会
公正取引委員会や中央労働委員会などが代表的な行政委員会であり、行政の民主的・効率的運営を図るため、他の行政機関から相対的に独立した 地位が認められている。
その他の行政委員会
・公安委員会…各都道府県の警察行政を担っている。
・教育委員会
・選挙管理委員会
・労働委員会
など。
・公安委員会…各都道府県の警察行政を担っている。
・教育委員会
・選挙管理委員会
・労働委員会
など。
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