【高校地理総合】世界の宗教についてまとめています。
宗教
宗教は古い時代には特定の民族のアイデンティティを支える存在であり、民族宗教としての意味合いが強かった。
- ユダヤ民族の宗教であるユダヤ教
- インド諸民族の宗教であるヒンドゥー教
やがて宗教は世界宗教としての性格を帯びてくる。西アジアで成立したユダヤ教を母体とするキリスト教とイスラム教は、現在の信者は世界全体に及ぶ。いずれもユダヤ教を母体としているため、ユダヤ教の聖地であるエルサレムはキリスト教とイスラム教の聖地でもある。
キリスト教
キリスト教は、世界で最も多くの信者がいる宗教です。ヨーロッパから北アメリカ、南アメリカ、オセアニアなどに広がります。
キリスト教にゆかりの文化として、クリスマスなどの行事や西暦などは、キリスト教に由来します。キリスト教は世界各国の人々の生活や文化に大きな影響を与えています。
イスラム教
イスラム教は、聖地のメッカあるサウジアラビアなどの西アジアを中心に、アフリカ北部、中央アジア、東南アジアなどに広がります。
イスラム教徒が多い国であるイランは、朝の生活は、いのりをよびかけるモスク寺院からの声で始まり、メッカに向かっていのりを捧げています。金曜日には、いのりのために、モスクに人々が集まります。イスラム教はアラブ民族の交易路に沿って広まって行った。
シルクロード沿い、海のシルクロード(香料交易がなされた)沿いの東南アジア、サハラ砂漠越えの岩塩交易路沿いのサヘル地帯など。
仏教
インドで発生した仏教も東南アジアや東アジアに広まった世界宗教であるが、仏教は托鉢(僧侶に食事などの施しを与える)の習慣があるなど、豊かな農業地域でこそ成立し、乾燥地域に広まっていない。
ただしラマ教(チベット仏教)は例外で乾燥国モンゴルなどにも信者が多い。
- 日本と仏教…日本で中国や朝鮮半島を通して伝わり、文化に大きな影響を与えています。寺院建築、仏像などの彫刻、絵画、文学など。
- 仏教徒が多い国…タイの仏教徒の男性は、一生に一度出家し、僧侶として修行を積むことで一人前とされます。町の人々は、毎朝、托鉢の僧侶に炊きたての米などをささげ、週一度は寺院でいのります
ユダヤ教
- ユダヤ教の教え…選民思想、唯一絶対の人格神、神との契約と律法の遵守
- 終末観とメシア(救世主)の待望…➊民族の苦難→➋預言者たちの活動(神の裁きの警告と救済の希望を語る)→➌律法の遵守で苦難を避け救済を求める道場→➍律法の形式主義化→➎終末観(終末論)の広がりとメシア(救世主)登場への期待
- 選民思想
- 唯一絶対の人格神
- 律法と契約の遵守
の3つを押さえておきましょう。これらについて、説明していきます。
選民思想
イスラエル人だけが神によって選ばれ、特別な使命を神から与えられ、神との契約を守れば救済されるとする選民思想(選民意識)を持つ思想。
唯一絶対の人格神
神ヤハウェは世界の創造神であるとともに、他に並ぶもののない絶対神・唯一神である。そして、愛や怒り、裁き、ゆるしなど人間的な意志や感情を持ち、イスラエルの民と契約を結ぶ人格神である。律法に背いた者には厳しい審判を下し、罰を与える厳格な裁きの神でもある。
律法と契約の遵守
神ヤハウェはイスラエルの民に対し、契約にもとづき神に仕え、絶対的に服従することを求めた。一方、イスラエルの民は神の意志や命令が示された律法(トーラー)を固く守ることにより、神の祝福と永遠の救済が得られると信じた。
活躍する預言者たち
預言者たちは、イスラエル人の堕落に対する神の裁きを警告するとともに、神の救済を語って人々に希望を与えた。預言者の活動によりイスラエル人たちの信仰は深められ、ユダヤ教の確立を促した。
- 預言者イザヤ(前8世紀)…最大の預言者とされる。敵の侵攻に際して神ヤハウェの正義と正しい信仰を説き、メシア(救世主)の到来を預言した。
- 預言者エレミア(前7~6世紀)…ユダ王国滅亡やバビロン捕囚の苦難にあったとき、人々に悔い改めを説き、「罪のゆるし」による救済への希望を示した。
- 領言者エゼキエル(前6世紀頃)…エルサレム陥落・ユダ王国の滅亡を預言し、陥落後は敵の破滅とイスラエル復興を預言して人々を励ました。
律法の形式化
信仰の儀式をつかさどる祭司たち(サドカイ派)や、律法の解釈を行う律法学者や自ら律法を厳格に守るパリサイ派は、律法を厳格に守らないことが苦難を招くと考え、律法をより厳守することを求めた。
しかし、そのため日常生活の些細なことがらにまで律法がおよぶことになり、律法をに的に遵守すればよいという律法主義(形式主義)の風潮も生まれた。
また、バビロン捕囚後、イスラエル人の間では、神に選ばれた民であるはずの自分たちがなぜ苦難を味わうのかという疑問について、議論が盛んになった。
終末観とメシア信仰の高まり
イスラエルの人々の間では、神の定めにより世界と人類が終末を迎え、神の審判と選民への祝福がもたらされて「神の国」が実現するという終末観(終末論)への意識が高まった。それとともに、終末の時期にメシア(救世主)が登場して人々に救いをもたらすというメシア待望の考え方が広まった。
メシア像の変化
メシア像は、最初はあくまでも異民族の支配からイスラエルを解放する民族の英雄としてのメシアであった。
その中に「苦難の僕」とよばれる 新たなメシア像があらわれてくる。新たなメシア像は、自らは罪を犯していないのに他人の罪を背負い、彼が罪を背負って苦しむことにより、人々に救いがもたらされるような存在のことである。これは、キリスト教における救世主イエス=キリストのイメージに近く、その原型になったと言うこともできる。
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