高齢化が進む日本では、介護士の人手不足が深刻な社会問題となっています。
大学入試の小論文では、このテーマを通して「福祉のあり方」や「労働環境の課題」を問う問題が増えています。
本記事では、介護士不足の背景や原因、課題、そして解決策を踏まえた小論文の構成例と解答例を紹介します。
社会問題を論理的に整理し、自分の意見を的確に述べるためのポイントも解説します。
介護士の不足について

現状
- 高齢化の進行に伴い介護需要が急増している。
- 2025年度には大規模な介護職員の需要が見込まれており、現状では数十万人の不足が予測される。
- 都市部や夜勤、特別養護老人ホームなどで特に人手確保が難しい。
主な原因
- 低賃金・待遇の厳しさ
- 他職種に比べて給与水準が低い。
- 身体的・精神的負担が大きく離職率が高い。
- 労働環境の問題
- 夜勤や長時間労働が常態化している。
- 利用者や家族との調整でストレスを感じやすい。
- 社会的評価の低さ(「きつい・汚い・給料が安い」というイメージ)
- 少子化による労働人口の減少
- 外国人材受け入れの課題
- 日本語力や定着支援の不足。
影響
- 介護サービスの質の低下や提供の遅れ。
- 家族介護の負担増で共働き世帯への影響が大きくなる。
- 地域格差が拡大し、地方での介護崩壊リスクが高まる。
- 医療・介護連携に支障が出る(病院の退院抑制など)。
主な対策・今後の方向性
- 処遇改善
- 賃金アップ、手当の充実。
- キャリアパスや資格による昇給制度の整備。
- ICT・介護ロボットの導入による業務効率化
- 外国人介護人材の受け入れと支援の充実
- 日本語教育や生活・就労支援の強化。
- 地域包括ケアシステムの推進(在宅支援・地域連携の強化)
- 介護の魅力発信と人材育成の強化(学校や研修での実習充実)
- 働きやすい職場づくり(休暇制度・勤務形態の柔軟化・メンタルケア)
介護士の不足についての解答例
日本は現在、急速な少子高齢化という深刻な社会問題に直面している。高齢者人口の増加に対して、若年層の減少が進み、労働力不足が顕著となっている。その中でも特に深刻なのが介護分野であり、介護士一人あたりの負担が増大している現状がある。介護は身体的にも精神的にも負担が大きく、離職率の高さも問題視されている。
しかし、近年のテクノロジーの進化は、この課題を打開する大きな可能性を秘めている。AIやロボット技術を介護現場に導入することで、介護士の労働環境を改善し、より効率的かつ持続可能な介護体制を構築することができると考える。
例えば、介護支援ロボットの活用が挙げられる。身体の不自由な高齢者を起立や移動の際に補助するロボットを導入すれば、従来、主に男性が担っていた力仕事を女性も無理なく行えるようになり、性別を問わず多様な人材が介護に携われる環境が整う。また、ロボットにカメラやセンサーを搭載し、遠隔で高齢者の体調を把握できる仕組みを導入すれば、介護士が一人ひとりの居室を巡回する手間を省き、限られた人員でより多くの利用者を見守ることが可能となる。
このように、テクノロジーと人間の協働による新たな介護の形を模索することは、単なる労働力不足の補填にとどまらず、介護の質そのものを向上させることにもつながる。人間が持つ「温かみ」や「共感力」と、テクノロジーが持つ「正確性」や「効率性」を組み合わせることで、両者が補完し合う持続可能な社会の実現が期待できる。
したがって、少子高齢化という避けがたい現実に対して、私たちはテクノロジーを恐れるのではなく、それを柔軟に取り入れ、人間と共存する社会を創り上げていくべきである。介護分野における技術革新は、単なる効率化ではなく、次世代の社会の在り方を示す重要な第一歩となるだろう。
介護士の不足についての講評(抜粋)
一つ抜粋しています。
■よりより小論文のために
テクノロジーを介護に活用する提案は、倫理的な問題を引き起こす可能性があります。例えば、高齢者のプライバシーや尊厳の保護、ロボット介護が人間らしい関係性や温かみを欠如させる可能性などがあります。これらの倫理的な側面についても論文で言及し、その解決策や対処法について議論することが望ましいです。
<例文>
介護にテクノロジーを導入する際には、高齢者のプライバシーや尊厳を保護することが最優先事項であるべきだ。例えば、ロボットや監視カメラを介護施設に導入する際には、個々の高齢者の同意を得ることや、データの適切な管理・保護策を講じることが欠かせないことは言うまでもない。また、高齢者がテクノロジーを快適に利用できるよう、使いやすいインターフェースやトレーニングプログラムを提供することも重要だ。
さらに、ロボット介護が人間らしい関係性や温かみを欠如させる可能性があるが、これに対処するためには、ロボットの設計やプログラミングに人間らしさや温かみを取り入れることが考えられる。たとえば、ロボットが高齢者とコミュニケーションを取る際には、声のトーンや表情の変化をシミュレートすることで、より人間らしい関係性を構築することが可能だ。また、ロボットが高齢者の日常生活を支援する際には、高齢者の個性や好みを考慮したカスタマイズ機能を提供することも有効である。
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