北海道大学教育学部の2017年度小論文では、「学校が人が育つ環境であるために」というテーマが出題されました。
この設問は、教育の本質や学校の社会的役割をどのように捉えるかを問う、極めて本質的な内容です。
本記事では、実際の設問意図を踏まえながら、解答の構成例・書き方のポイント・考察の深め方をわかりやすく解説します。教育を志す受験生にとって、思考力と表現力を高める格好の練習題材となるでしょう。
【改題】課題文を読んで、筆者の主張に対する自分の見解を述べ、学校が「人が育つ集団」であるためについて述べよ。
学校が「人が育つ集団」であるためのポイント

① 心理的安全性の確保
- 失敗や意見表明を恐れない雰囲気をつくる
- いじめ・排除を防ぎ、違いを尊重する
- 教師の受容的な態度と安心できる教室環境
② 協働的な学びの促進
- グループワークや探究活動を取り入れる
- 協力・助け合いを評価する評価基準を設ける
- 仲間との対話で多様な視点に触れる機会を作る
③ 信頼関係の構築
- 教師は「伴走者」として生徒に関わる
- 日常的な挨拶・感謝・思いやりの実践
- 生徒同士が互いを認め支え合う仕組み(ピアサポート等)
④ 個性と多様性の尊重
- 一人ひとりの強み・背景を理解し活かす
- 「みんな違っていい」を共有する校内文化
- インクルーシブな教育実践の推進
⑤ 挑戦と成長を支える仕組み
- 小さな成功体験を積める学習設計
- 失敗を学びに変える振り返りの時間
- 生徒が主体的に考え行動する機会の提供
⑥ 共通の目標・理念の共有
- 学校として育てたい人物像(ビジョン)の明確化
- 教職員・生徒・保護者で理念を日常的に体現する
- 学校行事や地域連携で理念を実践する機会を設ける
⑦ 地域や社会とのつながり
- 地域活動や社会課題への参加による実践学習
- 学校を社会とつなぐハブとしての役割を果たす
- 「生きる力」を育む学習の場とする
まとめ
- 安心・信頼・協働・挑戦・多様性・社会とのつながりのバランスが重要
- これらが揃うことで「自分らしく成長できる集団」が形成される
学校が「人が育つ集団」であるために論文
私は、著者の主張に賛成である。筆者が述べるように、集団が成り立つうえで重要なのは、均一性ではなく不均一性であり、異なる個性や役割をもつ人々が互いを尊重し、信頼し合うことにこそ意味があると考える。
仮に、学校の先生が全員優しい性格であったとすれば、生徒は将来、職場や社会で厳しい指摘を受けたとき、それを受け止め、乗り越える力を養うことが難しくなるだろう。逆に、先生全員が厳しいだけであれば、生徒が悩みを打ち明けにくくなり、安心して成長できる環境は失われてしまう。つまり、異なる性格や立場をもつ教師たちが存在してこそ、教育の場としての学校にバランスが生まれるのである。
私自身も、以前勤務していた病棟で同様の経験をした。当初、厳しくて怖いと感じていたベテランの看護師が退職すれば、職場が穏やかで過ごしやすくなると考えていた。しかし、実際にはその人がいなくなることで、指導の緊張感が薄れ、仕事の精度やチーム全体の連携が乱れた。結果として、その人の存在が、他の看護師たちの役割を引き立て、全体の調和を保っていたのだと気づかされた。この経験から、集団における「不均一さ」とは、単なる違いではなく、相互に支え合い、補い合う関係性の中で初めて意味をもつものであると実感した。
以上のことから、私は、学校という場が「人が育つ集団」であるためには、構成員一人ひとりが多様な価値観を受け入れ、自分とは異質な存在と共に生きる姿勢を身につけることが不可欠だと考える。同質的な人々だけで構成された集団では、衝突は減るかもしれないが、他者との違いを通して成長する機会も失われる。異なる意見や背景をもつ人々と関わる中でこそ、寛容さや柔軟な思考力が育まれるのだ。
しかし、現代社会においては、依然として少数派や異質な存在を排除する傾向が根強い。これは、少数派の孤立を招くだけでなく、多数派の側にも偏った価値観しか持てなくなるという弊害をもたらす。結果として、社会全体の多様性や創造性が失われる危険性がある。したがって、学校教育の現場では、まず「少数派」や「異質」といった区別そのものを前提としない視点を養うことが求められる。すなわち、すべての人を平等に尊重し、差別意識を根本からなくしていくことが重要である。
差別意識がなくなれば、「排除」という発想も自然と消えていくはずだ。多様な人々が互いの違いを認め合い、それぞれの役割を尊重できる社会こそが、真に成熟した社会であると私は考える。
学校が「人が育つ集団」であるために一般論
- 多様性を尊重: 異なる文化、バックグラウンド、および価値観を受け入れ、尊重することで、生徒たちが豊かな視野を持ち、相互理解が深まります。
- コミュニケーション強化: 適切なコミュニケーションスキルを養い、感情や考えをオープンに共有する環境を構築。これにより、協力や共感が促進されます。
- 個々の強みを引き出す: 生徒たちが持つ異なる才能や興味を発見し、それを伸ばすサポートを提供。個々の個性が尊重され、育まれる環境が必要です。
- 共感と協力の教育: 共感力や協力力を育む教育プログラムを導入。仲間意識や他者への思いやりを醸成することが重要です。
- 成長志向の文化: 失敗を恐れず、それを学びととらえる文化を醸成。ポジティブなフィードバックや挑戦への支援が、生徒たちの成長意欲を刺激します。
学校が「人が育つ集団」であるために視点
①「人が育つ集団」は、全員参加型であることがその前提にあると考える。
たとえば、学校の授業を考えてみる。授業は、先生がするものだと思われがちだが、生徒も一緒になって授業を作るという視点があれば、おのずとその集団である学級は成長していくだろう。それは、生徒が自発的に参加しているからだ。
②「人が育つ集団」は、当事者意識をそれぞれが持つという集団であると言える。
ここで述べる当事者意識は、「どんな時・状況も、自分にできることは必ずある」という意識だ。この意識があれば、自分とは価値観が違う人がいる集団においても、その人や集団に対して、自発的な行動が起こせるだろう。それぞれが当事者意識を持つということは、支え合うことになる。それが認め合うということにもつながっていくと考える。
コメント