近年、国際紛争や環境問題、貧困など、地球規模の課題が複雑化する中で、「世界平和をどのように実現するか」というテーマは、大学入試の小論文でも頻出の重要課題となっています。本記事では、国家を超えた市民の協働やNGO・INGO(国際非政府組織)の活動を切り口に、平和な社会を築くために必要な視点を論理的にまとめた小論文の解答例を紹介します。国際社会における政治・経済・文化のつながりを踏まえながら、「平和」を多面的に考察できる答案作成のヒントを解説します。
大学入試小論文テーマ:「世界平和の実現」まとめ

世界平和に関する出題の背景・意図
- 現代は戦争・貧困・環境問題など国家単位では解決しにくいグローバル課題が増加している。
- 入試では、グローバルな視野・人間の尊厳・多面的思考力を問う意図がある。
世界平和に関する小論文で問われやすい論点
| 主な観点 | 具体的な切り口・キーワード |
|---|---|
| 国家と個人の関係 | 国家主権・国際協調・国際法・国連の役割 |
| 経済的平和 | 貧困・格差・公正な貿易・SDGs・国際援助 |
| 文化・宗教的多様性 | 寛容・異文化理解・アイデンティティ・グローバリズム |
| 科学技術と平和 | 軍事技術・AI・核・サイバー攻撃・情報リテラシー |
| NGO・市民社会の役割 | 国際市民社会・ボランティア・非政府組織・人道支援 |
| ローカルとグローバルの調和 | 地域文化の尊重・ナショナリズム・多文化共生 |
世界平和に関する論の組み立て方(構成の基本)
序論
- 現代の課題のグローバル性を示し、論点(平和実現の必要性)を明確にする。
本論
- 平和を阻害する要因を分析する(例:格差・対立・情報の偏り)。
- 政治・経済・文化・市民社会の視点から解決策を提示する。
- 具体的事例(国連・NGO・ODAなど)を用いて説得力を高める。
結論
- 平和は相互理解と協働から生まれることを再確認し、個人・組織の行動を促す。
世界平和の思考を深めるキーワード
- 積極的平和(ポジティブ・ピース) — 戦争の不在ではなく、貧困や差別の解消を目指す平和。
- グローカル(Glocal) — グローバルとローカルを結びつける視点。
- 国際市民社会 — 市民主体の国際連帯。
- SDGs — 包括的な国際目標(特に目標16:平和と公正)。
世界平和に関する論を書くときの注意点
- 「平和が大切」だけで終わらせず、実現に向けた仕組みや具体的行動を示す。
- 対立構造(国家⇄個人、グローバル⇄ローカル)を踏まえた調和的解決を提示する。
- 事例やデータを適度に挿入して論証の裏付けを行う。
- 論理の流れ(序→本→結)を明確に保つ。
参考になる視点・引用例
- ヨハン・ガルトゥングの「積極的平和」理論
- 日本国憲法前文・第9条の平和主義
- SDGs(特に目標16「平和と公正をすべての人に」)
- ノーベル平和賞受賞団体の活動(例:国境なき医師団、ICAN)
まとめ(採点者に評価されるために)
- 平和は「戦争の不在」ではなく「持続可能な共生」であると定義する。
- 国家や国際機関に任せるだけでなく、NGOや市民、一人ひとりの行動が重要であると示す。
- 具体例と解決策を織り交ぜ、論理的かつ多面的に論じることで高評価を目指す。
(ある人の)世界平和についての解答例
私は、平和な社会を創造するためには、国家という枠組みを超えた「国際市民社会」の形成、すなわちNGOやINGOが作り出す「世界」の存在が不可欠であると考える。なぜなら、現代の紛争や貧困、環境問題といった課題は、いずれも一国の努力では解決し得ないグローバルな性質をもっており、それに立ち向かうためには、国境を越えて協働する人々の意識と行動が求められるからである。国家中心の国際関係では対応しきれない問題に対し、市民や専門家、ボランティアなどが自発的に結集するNGOやINGOの活動は、「もう一つの世界」を創り出し、人類全体の連帯を具体的に体現している。
さらに、平和の実現には、政治・経済・文化といった多様な領域の「世界」が互いに結びつき、調和を図ることが重要であると考える。経済の世界はすでに通信技術や情報ネットワークの発達によって高度にグローバル化し、各国の経済政策や制度には共通の枠組みが形成されつつある。一方、文化の領域においても、グローバリゼーションの進展は情報や知識の共有を促し、多様な価値観の交流をもたらしている。こうした経済的・文化的な結びつきは、人々の相互理解を深め、平和構築の基盤を強化する可能性を秘めている。
しかしその一方で、グローバルな一体化の流れに対して、各国の人々が自国の伝統や文化を守ろうとするローカルな動きも存在する。愛国心や文化的アイデンティティの尊重は決して否定されるべきものではないが、それが排外主義や対立を生む危険性もある。したがって、世界の平和を実現するためには、グローバルとローカルの緊張関係を適切に調整し、互いを尊重しながら協働できる仕組みを構築することが求められる。その点において、政府や国家に縛られずに活動するNGOやINGOは、両者をつなぐ架け橋として極めて重要な役割を担っている。
実際に、国際NGOは人道支援、教育、環境保全、紛争解決など、政治・経済・文化のあらゆる分野で活動を展開している。彼らの活動は、単に援助を行うことにとどまらず、現地の人々と協働しながら自立的な社会づくりを支援し、地域社会に根ざした「持続可能な平和」を育んでいる。そのような取り組みこそが、真に国境を越えたグローバルコミュニティの形成へとつながるといえる。
私は、これからの社会において、平和を「与えられるもの」ではなく「共に創り出すもの」として捉える姿勢が必要だと考える。そのためには、個々人が国際社会の一員としての自覚を持ち、NGOなどの活動を通じて世界的課題の解決に参画することが欠かせない。NGOやINGOが築くネットワークは、国家間の利害を超えて人と人を結びつけるものであり、そこにこそ、真の意味での平和な世界を実現する可能性があると私は信じている。
【一般論】世界平和への施策
国際協力の促進:国際社会全体で連携し、平和構築に向けた取り組みを強化。国際機関や連合国の役割を拡大し、共同の課題に取り組むための枠組みを構築する。
教育の普及:平和教育の普及を通じて、対話、相互理解、国際協力の価値観を広める。若者の教育に特に焦点を当て、異なる文化や価値観に対する理解を深める。
貧困削減と社会的公正の推進:貧困層や社会的に弱い立場にある人々への支援を拡充。格差の縮小や社会的公正の促進を通じて、不平等が平和の障害となるのを防ぐ。
紛争解決と予防:紛争地域における平和維持活動の強化と同時に、根本的な原因に対処するための予防策の実施。ダイアローグや交渉の手段を強化し、対話によって紛争の発生を未然に防ぐ。
持続可能な開発の推進:環境の保護と経済の発展を調和させた持続可能な開発を促進。資源の持続可能な利用と環境への配慮が、将来の紛争の原因を減少させる。
核軍縮と非核化:核兵器の削減と非核化を進め、軍拡競争を防ぐ。国際的な核軍縮合意の締結や、非核地帯の拡大に努める。
文化交流と国際理解:異なる文化や宗教との交流を奨励し、国際理解を深める。人々の相互尊重と共感が、平和な共同体の形成に寄与する。
サイバーセキュリティと紛争防止:サイバー空間での安全保障を確保し、サイバー攻撃による紛争を防止するための国際的な協力を促進。
【一般知識】日本の平和主義
平和主義と憲法第9条の第二次世界大戦の反省から、日本国憲法は基本原理として平和主義をかかげる。憲法の前文にも示される。
- 平和主義…戦争を放棄し、世界の恒久平和のために努力する。
- 憲法第9条…戦争を放棄し、戦力を持たず、交戦権を認めない。
- 自衛隊…日本は国の防衛のために自衛隊を持つ→政府は「自衛のための必要最小限度の実力」と説明→憲法に反するとの意見もある。
- 集団的自衛権…同盟関係にある国が攻撃を受けたとき、自国は攻撃を受けていなくても、その国の防衛活動に参加する権利。
・日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し 国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
・前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
コメント