【高校倫理】ベーコンの思想についてまとめています。
ベーコンとは
ベーコン(1561年から1626年没)は、イギリス経験論の祖とされる。主著には、『学問の進歩』『ノヴム=オルガヌム(新機関)』『ニュー=アトランティス』がある。
知は力なり
ベーコンは、従来のスコラ哲学のような学間は少しも実際の役に立たないと批判した。ベーコンは「知は力なり」と説き、自然についての正しい知識を得ることこそ、自然を支配する力となり、ひいては人類の福祉の向上に役立つとした。
そのためには、あるがままの自然を観察してその仕組みを理解し、自然法則を把握しなければならない。そしてその法則に従い、それを応用することによってはじめて自然を支配できる。
その意味でベーコンは、次のように述べた。「自然は服従することによってでなければ、征服されない。」つまり、自然をありのままに観察して 自然法則を把握する。自然法則に従うことによりはじめて自然を支配できる。
- スコラ哲学…中世には、ギリシア哲学(特にアリストテレス)を用いて、キリスト教の信仰を合理的に根拠づけようとする研究が盛んになった。教会や修道院に付属する学校(スコラ)で行われたため、スコラ哲学という。
ベーコンの説くの4つイドラ
人間には自然をありのままに観察することを妨げる多くの偏見や先入観があるとベーコンは言う。ベーコンはこうした偏見や先入観をイドラ(幻影)と呼んだ。
- 種族のイドラ…人間という種族すべてに共通な「イドラ」であり、遠くの星より近くの月が大きくみえることや太陽が西の方角に沈んでいくようにみえるなどの錯覚がその例である。
- 洞窟のイドラ…狭い洞窟の中から外の世界をみるように、経験の少なさ・個人の好悪に由来する偏見や先入観のことである
- 市場のイドラ…市場の雑踏で言葉が交錯する様子からの命名で、たとえば水を水素と酸素に分解するというと、「分解」 も「水素」も「酸素」も「水」も分かった気になってしまう「イドラ」である
- 劇場のイドラ…権威ある書物や思想に盲従するイドラであり、たとえば「アリストテレスはこう書いている、「教会の教義では 神が創造した」 などである。
ベーコンの帰納法
これらのイドラを排除した上で、ありのままの自然から一般的な原理や法則を導き出すための方法として、ベーコンは帰納法を唱えた。
帰納法は、観察や実験によって多くの事例を集め、それらの事例を比較・検証して、そこに共通する一般的な原理や法則を発見する方法である。 ベーコンが唱えたこのような方法は、近代科学の方法論として欠かせないものであり、その発達に大きな役割を果たした。
近代哲学の誕生
16~18世紀、近代科学が大きな成果を上げる中で、人間が自然を理解するとはどのようなことか、あるいは自然を理解する人間の能力とは何かといった問題について、根本的な問い直しが求められるようになった。
そして当時のヨーロッパ人にとって重大なことがらであった、人間と自然そして神との関係を再検討する中から、近代哲学が誕生した。近代哲学は、知識 の源泉をどこに求めるかによって、次の経験論と合理論に分けられる。
経験論
経験論とは、人間の知識の源泉を感覚的な経験に求める考え方である。主にイギリスで展開されたので、イギリス経験論ともいう。
合理論
合理論とは、人間の確実な知識の源泉を理性の働きによる思考に求める考え方である。主にヨーロッパ大陸で展開され、大陸合理論ともいう。
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