総合型選抜(旧AO入試)では「志望理由書」が合否を大きく左右します。なぜその大学を選ぶのか、学びたい内容や将来像をどう結びつけるのかを、自分の言葉で的確に伝えることが求められます。しかし「何を書けばいいのかわからない」「自己PRとの違いが曖昧」という悩みを抱える受験生も少なくありません。この記事では、大学入試の総合型選抜における志望理由書の基本構成、書き方のコツ、よくある失敗例や例文を交えながら、合格につながる実践的なポイントを解説します。
総合型選抜における志望理由書の重要性
なぜ志望理由書が合否を左右するのか

総合型選抜では、学力試験だけでなく「志望理由書」の内容が評価の大きな比重を占めます。大学は、単に学力の高さだけでなく「その学部で学ぶ強い意欲」「大学の学びと将来像がどう結びついているか」を重視します。そのため、志望理由書は自分の学びたいことを明確に伝える“合格へのパスポート”といえます。
自己PRや小論文との違い

志望理由書は「大学に入って何を学びたいか」を中心に書くものであり、自己PRや小論文とは目的が異なります。自己PRは自分の強みや経験をアピールするもの、小論文は論理的思考力や表現力を問うものです。志望理由書では、自己PRの要素を含みつつ「大学の学びと将来の目標」を結びつける点が最大の特徴といえます。
志望理由書の書き方
字数にもよりますが、志望理由書が、基本、4段落構成で書くといいでしょう。
- 主張(志・夢)→理由(きっかけ)・現状分析・解決策→学びたいこと→まとめ
- 主張(意志)→きっかけ→目標・夢→学びたいこと→まとめ
| 項目 | 説明 | 補足・例 |
|---|---|---|
| 基本構成 | 志望理由書は4段落構成が基本 | – 主張(志・夢)→理由(きっかけ)→解決策→まとめ |
| – 主張(意志)→きっかけ→目標・夢→まとめ | ||
| 主張(志・夢) | 自分が何を目指し、何を実現したいかを明確に述べる | – 例:将来〇〇に貢献したい、□□分野で〇〇を実現したい |
| 理由(きっかけ) | 自分の経験やエピソードを通じて、志望理由の背景を説明 | – 例:高校時代の活動や印象的な出来事 |
| – 自分の興味・関心が高まった瞬間 | ||
| 解決策・目標 | 志望学部や学科を通じて学びたいことや具体的な方法、最終的な目標を説明 | – 例:〇〇分野での研究を通じて□□を達成したい |
| – 学びを通じて得た知識を〇〇に応用したい | ||
| まとめ | 全体を総括し、志望校での学びの意欲と将来のビジョンを強調 | – 例:貴学での学びを生かし、〇〇分野で社会貢献したい |
大学を志望する理由の書き方
まず「なぜその大学・学部を選んだのか」を明確に書くことが重要です。単に「有名だから」「設備が整っているから」では説得力がありません。学部の教育方針、カリキュラム、教授の研究内容、ゼミや実習の特徴など具体的な要素を挙げることで、志望動機に説得力が増します。
学びたい内容と将来の目標の結びつけ方
大学で学びたい内容は、将来の進路や社会での役割につながるように記述します。例えば「心理学を学びたい」だけでなく「将来は学校現場で子どもの心を支えるカウンセラーになりたい」といった形で、学びとキャリアを結びつけると効果的です。
高校時代の経験や活動の活かし方
部活動やボランティア、課題研究などの経験を盛り込むと、志望理由書にオリジナリティが生まれます。例えば「野球部で培ったチームワークを社会学の研究に活かしたい」など、自分の経験と大学での学びを関連づけて表現すると、具体性と信頼性が高まります。
志望理由書の内容
志望理由書の内容には
- 志望理由(きっかけ・学部への魅力・施設や制度)
- アドミッションポリシーへの合致(直接的に記述するのでなく暗に合致していることをアピール)
- 志望学部への興味(学びたいこと含む)
- 将来への展望
などは必ず内容に組み入れたいことになります。
| 志望理由書の内容 | 具体的に含めるべき内容 | 補足・例 |
|---|---|---|
| 志望理由 | 志望動機やきっかけ、学部や学科への魅力、施設や制度について述べる | – 例:オープンキャンパスでの体験、教授陣の研究内容、施設設備の充実さなど |
| アドミッションポリシー | 自分の志望理由や目標が大学の教育方針や求める学生像に合致していることを説明 | – 例:自分の学びたいことと大学の目標の一致を具体的に述べる |
| 興味・関心 | 学部や学科への具体的な興味とその背景を説明 | – 例:〇〇分野の研究内容、〇〇学問の重要性に対する理解 |
| 将来への展望 | 志望学部での学びを活かして実現したい将来像を具体的に述べる | – 例:〇〇を通じて□□を実現するための計画やビジョン |
| 自己アピール | 自分の強みや学びの意欲をアピール | – 例:高校時代の活動経験や努力、成果を活用して大学生活でも貢献できる点 |
志望理由書の流れ
その具体的な流れと説明をしていきます。
| 項目 | 具体的な内容 | 補足・例 |
|---|---|---|
| 1. 意志提示 | 志望する大学・学部に行きたい理由を単刀直入に示す。将来の職業的目標や大学で学びたい内容を簡潔に述べる。 | – 例:「将来、総理大臣となり、国民が政治に参加しやすい社会を実現したい。そのために○○大学○○学部を志望する。」 |
| – ポイント:具体的な目標と大学で学びたい分野を明確に伝える。 | ||
| 2. きっかけ | 志望理由を持つに至った個人的体験を述べる。人との出会い、一冊の本、講演、体験などからインスピレーションを受けたエピソードを書く。 | – 例:「中学生の頃に総理大臣と直接会った経験を通じて政治に興味を持ち、その後、国会議員の選挙活動を手伝いながら政治の実情を学んだ。」 |
| – ポイント:自身の体験と興味を結びつけることで説得力を高める。 | ||
| 3. 社会的意義/具体的ビジョン | 志望理由を達成するための知識やスキルを大学で学び、それが社会にどのような意義を持つかを示す。また、将来の具体的なビジョンや解決策について述べる。 | – 例:「投票率の低さを改善するため、学校教育で『政治』という科目を導入したい。そのためには教育学や政治学の知識が必要であり、貴学のA教授の専門分野でこれらを深く学べると考えている。」 |
| – ポイント:具体性が重要。 | ||
| 4. まとめ | 全体をまとめて志望理由を再度示し、志望大学の特徴や魅力を強調する。自分の志望理由が大学に最も適していることを説明する。 | – 例:「貴学部では政治と教育の分野を統合的に学べる環境が整っており、自分の目標に最適な学びの場だと確信している。」 |
| – ポイント:大学の特徴と自身の目標が合致している点を強調する。 |
- 志…総理大臣となり、国民の多くに政治に興味、参加してもらう政府を目指す。
- きっかけ…総理大臣と会った。それから政治に興味をもち、国会議員の選挙手伝い、政治イベント企画などを通して政治を知る。
- 解決策…政治の問題点として、選挙制度、投票率の低さなどがあると知った。中でも、投票率の低さを改善したい。今考える解決策は、学校授業の中でも「政治」という科目を組み入れ、教育していこと。そうすることで、
- 学びたいこと…この「政治」を科目にするには、教育はもちろん、その制度、また科学的なエビデンスも必要になるだろうと考えている。貴学部では、専門家であるA教授がいる。…
- まとめ… ~から貴学部を志望する。
1.意志提示
志望する大学・学部に行きたい単刀直入な理由を最初にはっきり示す。単刀直入な理由は、将来の職業的目標、または大学で学びたい内容を1~3行程度でまとめる。(例)「将来〜になりたいので、○○大学○○学部を志望する。」 「~を学びたい。それが○○大学○○学部を志望する理由だ。
2.きっかけ
第1段落で示した志望の理由を持ったきっかけを個人的体験に沿って書く。個人的体験は、人との出会い、一冊の本、感銘を受けた映像、講演、体験などをまとめる。
3.社会的意義/具体的ビジョン
志望理由を成就するための基礎知識習得の形跡は、ここで示すことができる。将来の職業的目標を志望理由に挙げた人は、目指す職業や成し遂げたい仕事には、社会においてどんな意義があるのか。または、なりたい職業に就いたり、やりたい仕事にかかわったりして、具体的にどんなことを実現したいのか、そのビジョンを書く。大学で学びたい内容を志望理由に挙げた人は、その学問、研究が社会にとってどのような意義があるのか、または、具体的にどんなことを研究したいのか、どのようなかたちでアプローチしていきたい。
4.まとめ
全体をまとめて、もう一度志望理由を示す。そしてここで志望大学・学部に対するこだわりを示す。すなわち、志望大学ならではの特徴に触れ、自分の志望理由に最も沿うのは、受験大学であることを示す。
志望理由書 具体例
私は将来、経営コンサルタントになりたいと考えています。
そのきっかけは、父の姿を見て商業開発に興味を持ったことです。また文化祭では、クラス代表として出店企画を立案・作成し、店舗との交渉や仕入れ・販売を手がけましたが、自分の企画をみんなで実現していくことに大変やりがいを感じました。これらの経験を通して、私は大学で商学について深く学びたいと思うようになりました。
貴学商学部では、中小企業診断士に関する科目が正課科目に組み入れてあり、資格試験講座が設けられているなど、細やかなサポート体制が充実しています。特に、実際にビ ジネスの第一線で活躍している先生方の講義を受ける事ができ、最新のビジネストレンドに触れながら、実践的に学ぶ事ができるという点にも魅力を感じています。また、貴学のオープンキャンパスに参加しパンフレットで見た以上の感銘を受けました。学内施設や環境はもちろん、話をてくださった先輩方の学びに対しての大変真摯な姿勢に圧倒されました。
以上より、私の将来の夢の実現に向けて学んでいくためには最適な環境であると判断しました。貴学商学部のカリキュラムを見ると、どの科目も興味深く感じます。経営コンサルタントをめざすために、消費者の満足するような商品を企画・開発に必要な実践的なマーケティングを学びたいです。そして、唯一の経営コンサルタントの国家資格である中小企業診断士の取得をめざします。
現在の日本社会は、少子高齢化社会であり環境問題やユビキタス社会の到来で多くの課題を抱え、早急な解決が求められています。なかでも、超高齢化社会を間近に控え、安心で安全な商品や体に優しい商品・サービスを提供することなど高齢者の質の高い生活を実現する仕組みづくりが重要になってくると思います。私は経営コンサルタントとして、積極的に商品開発やサービスの開発を提供し、豊かで楽しい高齢者ライフを提案する事で、これからの日本社会に是非貢献していきたいと考えています。以上の理由から、私は〇〇大学商学部を志望します。
例文1:学問的関心を軸にした志望理由書(要約版)
私は「人の行動や心理の仕組み」を学びたいという強い関心から、貴学の心理学科を志望しました。高校時代、部活動でチームがスランプに陥った際、声かけや役割分担によって雰囲気が改善し、成果につながった経験があります。この出来事を通じて、心理学の理論が人の行動に影響を与えることを知り、学問的な探究心を抱きました。貴学では心理学の基礎から応用まで幅広く学べるだけでなく、臨床現場での実習機会も充実しており、学んだ知識を実践に活かすことができると考えています。将来は公認心理師の資格を取得し、学校現場で子どもたちを支える仕事に就きたいと考えています。
例文2:部活動・課外活動を軸にした志望理由書(要約版)
私は高校3年間、野球部で投手として活動し、チームの中心的役割を担いました。厳しい練習やケガを乗り越える中で、自らの努力だけでなく、仲間や指導者の支えがあって成長できることを実感しました。この経験を通じて「人と人を結びつけ、協力を生み出す仕組み」に関心を持ち、貴学の人間科学部を志望しています。貴学では心理学、社会学、教育学を横断的に学ぶことができ、人間関係や集団のあり方を多角的に探究できる点に魅力を感じています。将来はスポーツを通じて人々の成長や地域の活性化に貢献できる人材になりたいと考えています。
例文3:将来の職業を軸にした志望理由書(要約版)
私は将来、地方自治体の公務員として地域の課題解決に携わりたいと考えています。出身地である地方都市では人口減少や空き家問題が深刻化しており、地域の持続可能な発展には行政の積極的な役割が不可欠です。そのため、公共政策や経済を体系的に学べる貴学の政治経済学部に強く魅力を感じました。特に、行政学や公共政策を専門とする教授のもとで学ぶことで、理論と実践を結びつけた学びが可能だと考えています。将来は大学で培った知識と経験を活かし、住民に寄り添った政策立案を通じて、地域社会に貢献していきたいです。
合格につながる志望理由書の書き方のポイント
大学・学部の特色を具体的に調べて盛り込む
大学案内や公式HP、シラバスを確認し、具体的な授業名や研究テーマを挙げましょう。「国際関係学部で国際法の授業を履修し、将来は外交の仕事に役立てたい」と書けば、しっかりリサーチしていることが伝わります。
自分の強みを客観的に示す方法
「頑張り屋です」といった抽象的な表現では説得力がありません。「毎日1時間の自主練習を3年間続け、県大会でベスト8に進出した」といった具体的な成果を挙げることで、自分の強みが客観的に示せます。
抽象的ではなく「具体例」で伝える
「人の役に立ちたい」では漠然としています。「地域の子ども食堂でボランティアをした経験から、福祉に携わる仕事を志した」と具体的な体験を示すことで、説得力と熱意が伝わります。
志望理由書でよくある失敗例
「どの大学にも当てはまる内容」になってしまう
「学びたいことがあるから」「設備が整っているから」など、どの大学でも通用する内容は評価されにくいです。大学独自の特色に基づいた理由を必ず盛り込みましょう。
自己PRに偏りすぎる
自分の実績ばかりを並べても「大学で何を学びたいか」が伝わらなければ意味がありません。自己PRは志望理由と関連づけて記述することが大切です。
志望理由と将来の目標がつながっていない
「心理学を学びたい」と書きながら「将来は公務員になりたい」といったように、学びと目標がつながらないと説得力を欠きます。必ず一貫性を意識しましょう。
志望理由書を書く前にやるべき準備
大学案内・シラバスのリサーチ
大学の公式情報を確認し、授業名や教授の研究分野をチェックしておくと、志望理由に説得力を持たせられます。
オープンキャンパスや教授の研究内容の確認
実際に大学を訪れて得た印象や、教授の研究に触れて興味を深めた経験は強いアピールになります。
自己分析シートを活用する
自分の経験や価値観を整理するために自己分析シートを使うと、志望理由の土台を固めやすくなります。
まとめ|自分らしさを大学の学びにつなげよう
総合型選抜の志望理由書は、単なる作文ではなく「大学で学ぶ意欲と将来の展望を伝えるプレゼンテーション」です。大学の特色を調べ、自分の経験や強みとつなげることで、説得力のある志望理由が完成します。自分らしさを大切にしながら、大学での学びと将来像を明確に描き、合格につながる志望理由書を作成しましょう。
コメント