私たちが日々消費している食料や製品には、目に見えない「水」が使われています。それが「バーチャルウォーター(仮想水)」と呼ばれる考え方です。これは、製品の生産や輸送の過程でどれだけの水が使われたかを「見える化」する指標として注目されています。地球規模で水資源の偏在が問題となる中、この概念を理解することは、持続可能な社会を考える上で欠かせません。この記事では、大学入試小論文で問われやすい「バーチャルウォーターを指標とする利点」について、分かりやすく整理・解説します。
バーチャルウォーターのポイント

ある国が輸入する農産物や工業製品の生産に必要だった水の量を「仮想的に輸入している」とみなす考え方。
→ つまり、「水を含んだ貿易」を意味する。
イギリスの地理学者 トニー・アラン(Tony Allan) が1990年代に提唱。
具体例
例1:牛肉1kgを生産するのに必要な水 → 約 20,000リットル
→ 牛肉を輸入する国は、その分の水を「仮想的に輸入」していることになる。
例2:コーヒー1杯(約125ml)
→ 生産・加工に約 140リットル の水が使われている。
日本とバーチャルウォーター
日本は食料の約6割を輸入に頼っている。
そのため、大量のバーチャルウォーターを海外から輸入している国の一つ。
→ 日本の「バーチャルウォーター輸入量」は、年間 約600億立方メートル とも言われる。
意義・メリット
- 水資源の国際的な利用の実態を可視化できる。
- 水不足地域と豊富な地域の関係性を理解する手がかりになる。
- 各国の食料自給や環境政策を考える上で重要な指標となる。
課題・問題点
- 輸入先(生産国)の水資源が過剰に使われ、環境破壊につながることがある。
- 水の使用量だけでなく、地域の水ストレスや環境負荷の質的な差も考慮する必要がある。
- 消費国側の責任(見えない形で水を使っている自覚)が問われている。
関連概念
ウォーターフットプリント(Water Footprint):個人・企業・国などが直接・間接的に使用している水の総量を示す指標。
バーチャルウォーターを含む、より包括的な考え方。
(ある人の)バーチャルウォーターを指標とする利点の解答例
バーチャルウォーターという概念を指標として潜在的な水の利用量を考察することには、主に二つの利点がある。
第一に、国家の実質的な水資源消費量や、その環境負荷の全体像をより的確に把握できる点である。例えば、日本は一人当たりの直接的な水使用量こそ少ないものの、生産過程で多量の水を必要とする農産物や畜産物を海外から輸入しており、結果として国外の水資源に大きく依存している。このように、表面上の水使用量と実質的な消費量との乖離を明示することで、国際的な水利用の偏在と責任の所在が浮き彫りになる。水資源を大量に消費している輸出国の環境負荷を軽減するためには、輸入国である日本がその消費構造を見直し、輸入量そのものを減らす努力が求められる。
第二に、環境保護の観点から輸入作物の選択を合理的に行う指標となる点である。バーチャルウォーターを用いれば、各食品の生産に必要な水量が定量的に示されるため、水資源への負荷の少ない食品を選択的に輸入することが可能となる。例えば、1kgのトウモロコシの生産には約1800Lの水を要するのに対し、牛肉1kgにはその約2万倍もの水が必要とされる。この差を踏まえれば、牛肉などの水消費量の大きい畜産物の輸入を抑え、比較的水使用量の少ない農産物へと転換することで、世界全体の水資源利用の効率化に寄与できるだろう。
では、バーチャルウォーターの輸入削減に向けて、私たち一人ひとりに何ができるのか。まず、輸入食品への依存を減らし、地産地消を推進することが重要である。また、水資源を大量に消費する家畜肉の摂取を控え、代わりに大豆などの植物性タンパク質を積極的に摂取することで、栄養バランスを保ちながら環境への負荷を軽減することができる。
以上のように、バーチャルウォーターを指標とすることは、国家レベルのみならず個人の消費行動においても、環境保全への意識を喚起し、持続可能な資源利用社会の構築へとつながる極めて有効な手段である。
水を巡る現状
➊今後さらに人口爆発や干ばつなどで、水不足に陥る国は拡大されるとされる。このことから、「水戦争」が起こる懸念が高まっています。水不足に陥った国が、水を得るために戦争を仕掛けるってことですね。実際、戦争は歴史上200回以上起きています。
➋現在、世界保健機関(WHO)によれば、7億8000万人以上の人々がきれいな水を手に入れられずにいます。そして、水不足によって300万人を超える人々が毎年死亡しています。
バーチャルウォーターの新たな視点
➊水は資源であり、商品であるという感覚です。日本は、安価で安全な水道水を飲むことができますが、諸外国では様相が変わります。豊富になく、安全に飲めない国が多数です。安全な水道水が飲めるのは20カ国以下です。(ただし、水道代は高い国)。バーチャルウォーターを指標化(商品化)し、使用料を設定する方法も。
➋無意識な搾取。論文では、記述されていませんでしたが、作物や家畜を育てる際に使用する水以外に、生産あるいは加工に必要な分もあります。日本国内の水を使用しないで済んでいるということになります。日本は、無意識に、水という資源を搾取しているということですね。
【一般論】バーチャルウォーターを指標とする利点
(1)水資源管理の向上:バーチャルウォーターの概念を採用することで、製品の生産において使用される水の量に対する意識が高まり、水資源の持続可能な管理が促進されます。これにより、地域の水不足の問題への対策が進む可能性があります。
(2)サプライチェーンの透明性:バーチャルウォーターを考慮することで、製品のサプライチェーン全体での水の使用量が透明になります。企業や消費者は、製品がどれだけの水を使用しているかを知り、それに基づいて環境に配慮した製品を選択することができます。
(3)持続可能な消費の促進:バーチャルウォーターの概念は、持続可能な消費を奨励する要因となります。水の使用量が少ない製品やサービスが選ばれることで、水資源の節約や環境への負荷の軽減が期待されます。
(4)地域間の水利用の最適化:バーチャルウォーターの観点から、水の使用量が多い生産プロセスが特定され、それに基づいて地域間での水の利用が最適化される可能性があります。これにより、水の需要と供給を調整し、持続可能な水管理が進むでしょう。
(5)企業のリスク管理:バーチャルウォーターの考慮は、企業にとって水リスクの評価と管理を可能にします。水の使用量が適切でない場合、企業は水不足の影響を受けやすくなります。バーチャルウォーターの計測は、将来的な水リスクを把握し、適切な対策を講じる手助けとなります。
これらの利点からもわかるように、バーチャルウォーターは持続可能な水管理や環境に対する配慮を促進し、企業や個人がより責任ある選択をする手助けとなる重要な指標です。
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