【高校政治経済】中小企業についてのまとめです。
中小企業の要点
- 中小企業の地位…中小企業は事業所数の約99%、従業員数の約80%、製造業出荷額の約50%を占め、日本の経済の中で重要な役割を果たしている。
中小企業の定義
中小企業基本法第2条(2009年改正)による。
業 種 | 從業員規模 | 資本金規模 |
---|---|---|
製造業、その他 | 300人以下 | 3億円以下 |
卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
小売業 | 50人以下 | 5,000万円以下 |
サービス業 | 100人以下 | 5,000万円以下 |
中小企業と大企業の格差
経済の二重構造
中小企業と大企業との資本・生産・賃金などの格差の問題。
- 資本・生産性の格差…大企業に比べ, 資本装備率(従業員1人当たりに投下される資本の割合・労働装備率)が低く、生産性(1人あたりの生産額)が低いの労働条件の格差・生産性が低く、賃金なども低くなる。
大企業との金融格差(金融の二重構造)
中小企業は大企業に比べて担保資産が少ない。融資における信用の問題で利子率が高く、融資が受けにくい。
格差解消の取り組み
- 中小企業基本法…1963年に制定。大企業との格差是正・保護育成を目的とした。1999年の改正で、中小企業を日本経済のダイナミズム(活力)を生み出す源泉ととらえ、多様な発展を支援していく方針になった。
- 日本政策金融公庫(日本公庫)…中小企業などへの融資を行う財務省所管の特殊会社。低利率での融資を行う。2008年に設立。前身は国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫などを統合して設立された。
- 中小企業金融円滑化法…2009年に制定。銀行による「貸し渋り・貸しはがし」 に対する対策がとられた。
大店法の廃止による問題
地域の小売業は苦境に立たされ、地域の 空洞化などが問題となっている。
- 大規模小売店舗法(大店法)…各地域の中小小売業の保護を目的とし、大型店の市街地中心の出店等を規制していた法律。アメリカから強く規制緩和を求められ、廃止された(2000年)。
- 大規模小売店舗立地法(大店立地法)…大店法に代わって制定され、大規模 店舗出店に向けた生活環境整備が進められた。各地域に巨大ショッピングモールがつくられ、地方の市街地・商店街は次々にシャッター街化した。
- まちづくり3法の改正…2007年、大規模小売店舗立地法をはじめとするまちづくり3法は改正され、大型店舗の郊外出店などが規制された。
中小企業の役割と形態
中小企業の形態は多様化し、様々な役割・可能性が期待されている。
下請け
大企業・親会社から委託を受けて部品などを製造・加工する。資本・技術関係を通して、親会社と密接な関係にある。系列企業とも呼ばれる。近年、親会社から独立し、多角的経営を試みたり、グローバル市場に直接参入して成功する中小企業も増えている。
地場産業
地域の伝統的な技術・資本・労働力を用いて製造販売やサービスを行う。伝統工芸品や食器・眼鏡・刃物など、高い競争力をもつものや技術・ 品質・デザインで成功している分野もある。
ベンチャー企業
新しいアイデアや技術をもとに、新たな市場を開拓したり、ニッチ産業に進出したりする企業。IT分野で世界的企業に成長した例も多い。2005年の会社法制定で最低資本金の制限がなくなったために起業しやすくなった。有望な企業家に出資するベンチャー・キャピタルも設立されている。
中小企業の演習問題
日本の中小企業に関する記述として最も適当なものを、次の1~4のうちから一つ選べ。
1 製造業における従業員一人当たりの生産性は,従業員20~29人の企業の方が,従業員300〜499人のそれよりも高い。
2 中小企業の従業員数は、全企業の従業員数の約99パーセントを占める。
3 製造業における従業員一人当たりの賃金は,従業員20~29人の企業の方が,従業員300~499人のそれよりも低い。
4 製造業では,中小企業の出荷額は全企業の約70パーセントに及ぶ。
中小企業の演習問題の解答・解説
正解 3
1 従業員一人当たりの生産性は,従業員が多い企業ほど高くなるので,誤り。
2 全企業の従業員数に占める中小企業の従業員数の割合は、約70%であり,誤り。全事業所数に占める中小企業の割合は約99%である。
4 製造業における中小企業の出荷額の割合は約47%であり、誤り。
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