【高校地理】ホイットルセーの農業・農牧業区分の特徴まとめです。
ホイットルセーの農業・農牧業区分
ホイットルセーは、アメリカの地理学者で、世界の農牧業地域を13に区分しました。それぞれの農牧業の特徴を捉えよう。
焼畑農業
熱帯雨林地域において行われる粗放的な農業形態。熱帯は土壌(ラトソル)がやせており、草木灰を使って農業が行われる。 キャッサバやソルガム(雑穀)などが自給的に栽培され、家畜飼育を 伴わないことが特徴。数年ごとに耕地を移動するので、移動式農業ともいわれる。
先住民が自給のために採集や森林や草原を焼き払って灰を肥料にする焼畑農業を行う以外、手つかずでした。その後、熱帯雨林の開発が行われます。19世紀末にマナオス中心に、ゴムの大農園が開かれ、20世紀後半には大規模開発が始まります。大きな道路が作られ、沿道の熱帯林が広範囲に切り出されて、輸出され、跡地は輸出用中心の牧場や農地になりました。
遊牧
乾燥・高原・ツンドラなど農耕が行われない地域において営まれる牧業形態であり、広範な地域で家畜を移動させる。
- 乾燥地域では羊やラクダ
- チベット高原ではヤク
- アンデス高原ではリャマやアルパカ
- ツンドラ地域ではトナカイ
など。
この地は古代から遊牧民族の地であったが、7世紀にムハンマドがイスラム教を興すと、西海岸の都市メッカがその聖地となった。
オアシス農業
伝統的な灌漑農業のことで、旧大陸(ユーラシア大陸・アフリカ大陸)の乾燥地域で営まれる。灌漑は主に外来河川や地下水路を用いて行われ、小麦やナツメヤシが栽培される。商業的に綿花栽培が行われるところもある。
アシア式稲作農業
集約的米作農業、自給的米作農業ともいう。主に年降水量1000mm以上の多雨地域において行われ、大河川下流域の沖積低地を中心に米作が営まれている。中国の華中・華南、日本の本州以南、東南アジア、南アジア東部(バングラデシュ・ガンジス川 下流域)などでみられる。
- 中国…世界最大の人口をもつので、食料生産量は世界有数の大国です。米と小麦の生産量は世界第一で、とうもろこしも、世界有数です。東部の平野部でさかん。
- 中国華北地方では、寒冷な気候のため畑作が中心で、小麦や大豆などの生産。
- 中国華中地方では、温暖多雨な気候で稲作が中心で、米の生産。
集約的農業
土地集約と労働集約の二つの意味がある。
土地集約は土地(耕地)を有効に利用することであり、土地生産性が高くなる。つまり1ha当たりの収量は大きい(収量-耕地面積)。労働集約は労働力に大きく依存することであり、労働生産性は低くなる。つまり労働者1人当たりの収穫量は小さい(収量・労働力)。「アジアの農業は集約的であり、土地生産性が高く、労働生産性が低い」と考えられる。
アジア式畑作農業
定額的畑作農業、自給的畑作農業ともいう。主に年降水量1000mm未満のやや少雨地域において行われる。小麦などの穀物、輪花などが栽培される。中国の東北地方・華北、日本の北 海道、南アジア西部(パキスタン・ガンジス川上流域)などでみられる。
酪農
乳牛を飼育し、生乳や乳製品を生産(鮮度が重要でもあり、大消費地に近い方が有利)。大陸氷河の影響で地力に乏しく農耕に適さない地域。ヨーロッパの北海・バルト海沿岸、アメリカ合衆国のニューイングランド地方・五大湖沿岸など。
- オランダの農業…園芸農業が盛ん。酪農によりチーズなどを生産。
- オーストラリアの酪農…温暖湿潤気候で人口が多い南東部。
混合農業
農耕と家畜飼育が有機的に組み合わされた農業形態。穀物や飼料作物の栽培は輪作によって行われ、家畜の排泄物は肥料として用いられる。ドイツやポーランドではライ麦とジャガイモの輪作、豚の飼育がみられ、アメリカ合衆国のコーンベルトではトウモロコシと大豆の輪作、牛の飼育がみられる。
北部・西部では穀物・飼料作物の栽培と家畜の飼育を組み合わせた混合農業が発達。
地中海式農業
夏の乾燥に耐えるブドウなどの樹木栽培に特徴があり、樹木農業ともいわれる。降水がみられる冬に小麦の栽培、さらに家畜としてはヤギが飼育されることも。世界中の地中海性気候の地域でこの農業形態はみられ、南ヨーロッパ以外でも、アフリカ大陸北 西部・南西部、地中海東岸(イスラエルなど)、アメリカ合衆国太平洋 岸(カリフォルニア州)、チリ中部、オーストラリア南部に地中海式農業地域はみられる。
企業的穀物農業
商業的穀物農業ともいう。大規模で小麦栽培に特化した農業形態であり、肥沃な土壌と結びつくことが多い。プレーリー土が分布する北アメリカのプレーリーからグレートプレーンスにかけての地域やハンバ士に恵まれた南アメリカのパンパなど。
- グレートプレーンズ…北アメリカ大陸、ロッキー山脈の東麓から西経約100度線との間に広がる平原。牛・馬の放牧と小麦・トウモロコシを産出する農牧業地帯。
- プレーリー…肥沃な土壌にも恵まれ,白人による開発の進行にともない,小麦,トウモロコシ,綿花などを産する農業地帯へと変貌
- パンパ…ラプラタ川流域は、温帯でパンパと呼ばれる草原が広がる。
旧大陸においてもウクライナからカザフスタン北部のチェルノーゼム地帯はやはり企業的穀物農業地帯で大規模な小麦栽培がみられる。これれ以外にも オーストラリアのマリー川流域ではスノーウィーマウンテンズ計画による灌漑で企業的穀物農業が行われている。
企業的牧畜
粗放的牧畜ともいう広大な牧場における放牧に特域がある。やや降水の多いところでは肉生が飼育され、ブラジルやオーストラリア北東岸などが該当。牧牛がさかんになった背景には、大消費地であるヨーロッパへの肉類輸送を可能とした冷凍船の就航という条件があった。
また、より降水量の少ない地域では毛羊が飼育され、アルゼンチンの乾燥パンパ、オーストラリアのグレートアーテジアン盆地(被圧地下水が利用される)などが該当。
園芸農業
穀物は栽培されず、収益性の高い野菜や果実、畜産物などの生産に特化した農業形態で、極めて土地生産性が高い。
例えば、オランダは野菜や乳製品、肉類、球根、花所などの生産が多く、それを輸出することで外貨を稼ぎ、フランスなどから小麦を輸入している。
都市周辺で行われる近郊農業を考えたらいいが、輸送手段が発達している場合には都市の遠隔地でも成立(輸送園芸農業)。
労働者を雇い大型機械を使用して大規模に栽培。自然条件や社会条件に適した作物を栽培(適地適作)。大規模に栽培すると生産にかかる費用は安くなる。
- 小麦…プレーリーからグレートプレーンズにかけた地域で小麦の栽培。
- トウモロコシ…中央平原北部のオハイオ州からアイオワ州にかけて栽培。大豆の生産も盛ん。
- 酪農…五大湖の周辺。
- 綿花…南部一帯から東部。大豆や落花生の栽培。
- 地中海式農業…カリフォルニア州を中心にぶどう、オリーブ、オレンジなどを栽培。
プランテーション農業
熱帯・亜熱帯に開かれた大農園による農業。大農園の多くは、その地域を植民地支配していた欧米諸国の資本家によって開かれたものである。特定の商品作物の栽培に特化し、自給作 物の生産は行われない。そのため、特定の農産物の生産と輸出に経済が過度に依存するモノカルチャー化が進行し、穀物を輸入に頼らざるを得ないという問題点が生じる。
世界の農業形態
世界の農業形態を説明した(1)~(5)は,下記の【語群】農業型ア~キのいずれにあたるか。それぞれの記号で答えよ。
(1) デンマークやアメリカのコーンベルトなどで行われている農業形態で,穀物や飼料作物を栽培し,豚や肉牛などを肥育する。家族農場が主体であり,作物の栽培と家畜の飼育が有機的に結合しているが,畜産物の販売に重点がおかれている。
(2) 熱帯雨林気候やサバナ気候のもとで行われている原始的な農業形態で,森林の伐採火入れによって畑地を造成するが,耕地は雑草の侵入や地力の低下のため 3~5年で放棄される。栽培されている作物はヒエ・キビなどの雑穀類やイモ類が中心。
(3) ヨーロッパの市場を相手に新大陸で開花したこの農業形態は,畜産物を生産するのに広大な土地を必要とする。鉄道の普及と大型船による輸送費の低下がこの農業を発展させたので,産業革命の落とし子ともよばれた。この農業型は より集約的な農業によってより乾燥した地域に追いやられることになった。
(4) 都市周辺で新鮮な牛乳を供給する形態を含み、この農業形態は, 穀物の適正な収量のあがらない冷涼な気候地域で行われることが多い。家族農場が多く,収入は定期的に入るが,土地所有規模は比較的小さい。毎日の労働が必要なので,若者にきらわれる傾向がある。
(5) 香辛料の栽培から始まった農業形態で,コーヒー・茶・砂糖などの嗜好品の 栽培ばかりでなく,ゴムなど工業原料をも栽培するようになった。発展途上国の多い熱帯諸国では,これらの農作物の単一耕作によるモノカルチャー経済からの脱却が課題となっている。
ア:焼畑農業(移動耕作) イ:プランテーション農業 ウ:遊牧
エ:企業的放牧業 オ:商業的混合農業 カ:酪農 キ:園芸農業
世界の農業形態の解答・解説
(1)オ,(2)ア,(3)エ,(4)カ, (5) イ
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