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【高校政治経済】国際経済の現状と課題

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【高校政治経済】国際経済の現状と課題についてまとめています。

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国際分業と国際貿易

国際分業

貿易を通じて生産を分担すること。次の2つの形態がある。

  • 垂直的分業…製品を組み立て、最終加工する(技術集約的工程)国と、原材料・部品をつくる(労働集約的工程)国間の分業。主に先進国と発展途上国間。
  • 水平的分業…異なる工業製品を生産し、貿易を行う。主に先進国間で行われる。

貿易の形態

  • 自由貿易…国家の干渉がなく、自由に行われる貿易のこと。
  • 保護貿易…輸入品に高い関税を課すなどして、自国の産業の保護・育成を図る。
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国際分業と自由貿易

自由貿易の考え

イギリスの経済学者リカードは、「経済学および課税の原理」の中で比較生産費説を展開し、自由貿易・国際分業の利益を主張。

比較生産費説

各国が自国に適した商品の生産に特化(生産を集中すること)し、これを相互に貿易するのが双方に有利とする考え。

国際分業の利益

  • 特化前…両国が貿易をしなければ、たとえば、ポルトガルは170人でワイン・ 毛織物を各1単位ずつ生産。一方、イギリスは220人で各1単位ずつ)生産することになる。
  • 比較優位…自国の他産業と比較しての優位のこと。たおてば、ポルトガルはワイン生産に比較優位があり、イギリスは毛織物生産に比較優位があるなど。それぞれ, 比較優位にあるものに特化する。
  • 特化後…たとえば、ポルトガルは特化しない場合と比べて、同じ労働力でワインを0.125単位増産でき、イギリスは毛織物を0.2単位で増産できる。つまり、各国は特化して貿易すれば、同じ労働者の数で全体の生産量が増えることになる。

自由貿易体制とWTO

  • WTOと貿易紛争…特定の輸入品目に対する関税などで相手国と外交紛争となった場合は、WTOが勧告を行ったり、相手国がWTOに提訴することもある。
  • 世界貿易機関(WTO)…GATTのウルグアイラウンドから発展し、貿易の障害を取り除き、世界の自由貿易を促進する機関
  • セーフガード…WTOが認める緊急輸入制限措置。特定品目の輸入急増によっ て国内産業に重大な損害が生じる場合、関税の引き上げや関税割当制度、輸入数量制限、輸入ライセンス停止などの措置をとることができる。
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保護貿易

リストの保護貿易論

ドイツの経済学者リストは著書「政治経済学の国民的体系」の中で保護貿易論を主張し、アダム=スミスやリカードの自由貿易論は先進国の理論であると批判した。また、当時の発展途上国ドイツの国内産業の保護・育成と工業化を目指す「幼稚産業保護論」を唱えた。

自由貿易と途上国

リストの考えは、ドイツの工業化に向けた保護貿易・産業政策の基礎となった。また、戦後日本の産業政策や急速に発展した東アジア諸国等の例もまた、産業保護育成政策が後発国・途上国の発展に役立つことを示している。

貿易制限の方法

自国内の産業や雇用の保護、安全保障や国民の利益を守るために関税や各種の規制・規格を設けている。これらの規制は、自由貿易を妨げる関税障壁・非関税障壁であるとして国内外から批判される場合がある。

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国際経済と日本

貿易摩擦

貿易などをめぐる通商上の問題。特にアメリカに対し1950年代以降、繊維、鉄鋼、カラーテレビ、自動車、半導体の輸出をめぐって対立が 起こった。

経済摩擦

1980年代からアメリカは日本の製品が不当廉売(ダンピング)であると主張し、不当な輸入障壁が存在しているとして批判した。アメリカの姿 勢は徐々に強硬なものとなり、金融・流通をはじめとした日本市場の閉鎖性を問題にするようになった。アメリカは一方的な経済制裁を定めた「スーパー301条」を適用して対抗し、こうして経済摩擦に発展した。

日米構造協議

1989年、アメリカは日本の市場開放を強く求めた。1993年からの日米包括経済協議では日本の経済構造の改革にまで問題が発展した。

プラザ合意と円高

プラザ合意以降の円高によって、内需主導経済への切り替えを進めた日本だったが、90年代まではまだ内需の割合は比較的少なかった。このため、アメリカは内需主導を強く求めるようになった。

  • 海外移転…日本の輸出産業は海外移転・現地生産へ切り替えていった。また、国内向け製品を製造する企業も海外工場で生産し、国内に輸入するようになった。この結果、産業の空洞化、雇用の不安定化が問題となった。
  • 金融自由化…貿易摩擦は一部抑えられたが、アメリカの対日輸出が振るわなかったため、アメリカは日本経済の構造的問題であるとして、金融の自由化などを要求した。1996年以降、金融ビッグバンによって大規模な自由化と外資導入が進むこととなった。
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グローバル化する経済

グローバル経済

貿易・資本の自由化による労働力・商品・サービス・資本が国家の枠を超えて流通する地球規模の経済。

  • グローバルスタンダード…世界標準として、投資家の保護、市場原理主義。規制の打破、自由化であり、経済活動・投資活動の妨げを取り除く動きが中心。また、製品などの規格を統一しようとする動きもある。
  • 多国籍企業…活発に対外直接投資を行い、海外現地法人や合弁会社の設立。M&Aなどで世界中に拠点を増やしている。
  • 新興国への投資…高い経済成長率を示している新興国や投資のチャンスのある国・地域には世界中から投資が殺到している。国土・人口・潜在的需要の巨大なBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)はグローバルな投資を呼び込んでいる。
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グローバル金融市場

為替リスクを避けるために開発された金融派生商品(デリバティブ)が金融市場で大量に出回るようになった。

ポートフォリオ

安全性や収益性を考えた、有利な分散投資の組み合わせ。為替の値動きが激しくなってきたため、投資家がリスク回避を図りながら金融派生商品を買うようになった。

サブプライム・ローン

アメリカの低所得者の住宅購入のために貸し付けられたローン。多くのデリバティプに組み込まれていた。審査が甘いかわりに金利が高く、貸し倒れも多かった。2008年、不良債権化して問題が顕在化(サブプライム・ローン問題)し、世界金融危機に発展した。

ヘッジファンドと通貨危機

ヘッジファンドは、投資家たちから私的に出資を募る投資信託の組織である。グローバルに投資先を探し、莫大な投機資金を移動させて収益を上げる。1997年、タイから発生したアジア通貨危機。1998年のロシア通貨危機、2008年の世界金融危機を引き起こす要因となった。

全趣システム安定化

各国中央銀行は金融機関に資金供給を行って金融システムの安定化を図った。G20の金融サミットが開かれ、ヘッジファンドやタックスヘイブン(租税回避地)への規制・監視を強化することが決定された。

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経済統合の進展

環太平洋地域、北米・南米などの地域で経済統合が進んでいる。WTOによる交渉が難航する中で2国間、また地域間でFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)の締結を積極的に進めている。

FTAとEPA

FTA(自由貿易協定)が関税・非関税障壁の撤廃・除去を目指すのに対し、EPA(経済連携協定)は人的交流の拡大、知的財産権保護、投資ルールなどの整備など、より積極的な経済協力関係を目指す。

各地の経済統合の動き

  • APEC(アジア大平洋経済協力会議)…1989年にオーストラリアの提唱で発足。日本、アメリカ、中国、ロシアを含む21か国・地域で構成されている。
  • ATA (ASEAN自由貿易地域)…1993年発足の自由貿易協定。ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国10か国による関税・非関税障壁の軽減を目指す。
  • AFTA(北米自由貿易協定)…1994年、アメリカ・カナダ・メキシコによって発足。先進国と途上国間の自由貿易協定。貿易・投資の自由化を進める。
  • MERCOSUR(南米南部共同市場)…1995年、ブラジル・アルゼンチン・ウ ルグアイ・パラグアイによって発足。現在ベネズエラを加えた5か国。域内無関税、対外共通関税をとる。

日本の地域的経済協定

  • EPA(経済連携協定)…2002年、シンガポールとの間で締結された。その後メキシコ・マレーシア・フィリピン・チリ・タイ・ブルネイ・インドネシア、ASEAN、ベトナム、スイス、インドと結んでいる。
  • TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)…現在、環太平洋地域の国々と経済の目用化を目的とした戦略的パートナーシップの交渉が進んでいる。

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