大学入試・小論文出題ネタ|女性問題のポイントについてまとめています。
女性問題のポイント
女性問題は女子大・短大では頻出中の頻出。だが、それ以外でも、法学部などで近年、女性の人権、セクハラ問題といった形で出題される。
女性差別の実態
男女雇用機会均等法の1986年から実施されて多少の改善はされたが、まだ男女の就職の機会は平等ではない。女性はさまざまな点で差別されている。女性が差別されるのは、女性は家にいて、家事や育児を行うべき存在とみなされ、社会に進出すべきだとは思われていなかったためだ。 しかも、女性は子どもを産むために、企業にとって男性に比べて効率がよくない。結婚して、子どもをつくって仕事をやめる。子どもの病気、学校の行事といったことで、仕事が男性並みにできない。そんなわけで、企業は女性を雇おうとない。雇っても重要な地位につけない。
男女平等を目指して
いまだに性別役割分担の考えが残る。「男性は仕事, 女性は家事と育児」 採用や昇進などで女性が不利。セクシュアル・ハラスメントも問題
→1985年雇用機会均等法
→1999年男女共同参画社会基本法制定。
男女が対等に参画し活動できる社会をめざし、育児休業の取得促進、保育所の整備などが求められる。
男女の役割分担
すべての女性が家で子どもを育てるのに向いているわけではない。「男は社会に出て仕事をし、女性は家で家事をする」という役割分担も人為的なものでしかない。女性は、しとやかであるように教育されてきたにすぎない。もちろん、女性は子どもを産むことが できるし、筋力などが肉体的に男性に比べて弱いのは、否定できない。男と女は、肉体的にも、精神的にも異なる。だが、そうした違いを認めて、女性らしさを強 制せず、みんなが自分らしく生きる必要がある。そのためには、強制的な男女の役割分担をなくす必要がある。
男女平等の社会
「男は外で働いて…」という分担をやめて、男女が協 力して働き、協力して家事をし、協力して育児をしようとする。そのためには、スウェーデンなどのように、男性にも育児休暇を認めるという制度を設ける必要 があるだろう。そうすることによって、男性も「社会で働いて、妻子を養わなければ男として恥ずかしい」という重圧から解放されることになる。男と女が自分に適したことをして、そ れぞれ正当に評価される社会、それこそが男女平等の社会と言えるだろう。
ジェンダー問題のキーワード
男女の役割分担
「男はこうあるべきだ」「女はこうあるべきだ」という役割を強制したら、一人一人の個性を認めないことになる。性によって決めつけるのでなく、個性を重視すべきだ。
家制度
女性は家制度の犠牲者だと言われる。結婚は他家に入ることであり、自分の生まれた 家から出されることを意味する。家を重視するのでなく、個人を視することが女性差別から 女性を解放することにつながる。
セクシャル・ハラスメント
男性が女性を仕事 のパートナーではなく、セックスの興味の対象として考えて、仕事上の地位を利用して女性との関係を迫る。女性を同僚としてみない男性のあり方に問題があると考えられる。
夫婦別姓
現在は、ほとんどの妻が夫の名前を名乗っている。だが、それは家制度の名残なので、妻も自分らしさを守って、夫と別の姓を名乗っていいのではないかという意見がある。これには、「家族は一つであるべきだ」という反論があり、議論されている。
女性の権利・フェミニズムの解答例
<問題>
女性の権利において、本文を踏まえて、あなたの考えを論ぜよ。
●ある人の回答
私は、男女差別を是正し女性の社会的地位の向上を主張する上で、ポジティブアクションの考え方が必要であると考える。なぜなら平等は同じ地位に立ってから初めて成立すると思うからである。その平等性を実現するために、積極的に弱者を守り支援していくことこそが第一歩になるに違いない。
この論文から一例を挙げると、現代における政治思想は、女性たちがやむを得ず担ってきたケア労働を、自由に選択した私的領域であると観念しているが、そのケアする権利を基本的人権の1つとして最低限保証し、政府は支援していくべきであると筆者も述べている。この考え方は「ケアの倫理」に基づいていて、他者への共感、自己批判、文脈の中で生じる他者への責任などの、より弱い者への視線から物事を考えることが大切である。一方で、現状を生み出したといえる、公的領域においての基底となる倫理が「正義の倫理」だ。筆者は、「ケアの倫理」の本質について、特定的でありながらも他者をかけがえのない唯一なものとして尊重する態度は、公的領域において必要不可欠であると述べている。つまり双方の倫理は相反するものではなく、お互いを尊重し合って社会を構成していくべきであると考えているのだ。
確かに、家族の生命を支えるために家事労働という労苦を担うべく、「正義の倫理」を尊重してきた歴史を見れば、女性が弱者になるのも当然だったのかもしれない。家族の領域は、国家の干渉を受けずに済むが、無限の可能性に開かれた次世代を養育しなければならない重い課題を持っている。そこでおなかを痛めて生んだ母親が我が子を育てるという考え方に行き着いたという。
しかし、家族を構成する1人1人を見ると、それぞれが異なる背景を持っている。家族という領域は、年齢、能力、出自、性別、民族、国籍を超えた集団ともいえよう。そこで生かすべきは「ケアの倫理」であると私は思う。家族の中の弱者の立場に合わせて、家事労働含む1つ1つのアクションを積極的に行っていけば、男女差別は縮まり、女性の社会的地位は男性と平等になるだろう。
以上のことから、私は男女差別を是正し女性の社会的地位の向上を目指すために、ポジティブアクションの考え方が必要であると考える。
●講評
本文はよく読み込まれていること、題意を踏まえて記述できている点で素晴らしい出来。主張からまとめまでの一連の流れもスム-ズでよい。
ただ残念だったのが、ポジティブアクションの具体例そして、ポジティブアクションの自分なりの考えや提案があるとよかった。この問題にように、「あなたの考えを論ぜよ。」という場合は、自分の考えに対して、「具体例や解決策」を組み込み、自分の考えが浅はかでないことを論じたい。それが、自分自身のアピールとなり、オリジナリティのある論文となる。
●考察
この課題における一般的な構成例。
- 第一段落 筆者のケアの論理と正義の論理の分析の要約(下記の分析例を参照)
- 第二段落 自分の意見または、問題提起 (下記の主張例を参照)
- 第三段落 事例・具体例や反駁または、解決策 (下記の具体例(解決策)を参照)
- 第四段落 まとめ
- ケア労働の論理…誰かが担わなければならない労働で、契約論に基づく家族論において、これまでは、女性の「自然・本性」に訴えることで、当然女性が果たすべきであると考えられたと分析。そこには、女性を市民の地位から排除、決して自由意志で選択したわけでもないという事情もある。
- 正義の論理…公的領域において基底的な倫理である。「正義の倫理」とされる背景から、特に育児・介護といった家事労働は女性の役割とされてきた。だが、筆者はこうした考え方について、社会的弱者としての女性の立場を尊重する「ケアの倫理」の見地から再考の余地があると考えている。
●主張の例
男性が働き、女性が家事を担うという一つの固定観念が通用しなくなった現代において、筆者の分析した、ケア労働の論理も当然見直されるべき時代だろう。より正義の論理に根差した取り組みが必要である。
●具体例(解決策)
育児休暇を取りやすくする、待機児童をゼロにする、働き方改革など政治主導の制度改革も考えるだろう。私は、育児・介護特別手当の支給はどうだろうかと考える。子どもを育てている家庭、または介護を必要としている家庭には、一定の金額を支給とすると同時に、週1回は特別休暇を夫婦それぞれに与えられるといった手当も付与することで、ケア労働への男性を参加が可能になるだろう。
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