大学入試・小論文出題ネタ|豊かさについてのポイントをまとめています。
豊かさについてのポイント
社会系、人文系で、さまざまな形で 「豊かさ」、とりわけ「日本の豊かさ」が問題にされる。「豊かさの特徴」「豊かさの意味」「これから求めるべき豊かさ」 について、理解しておく必要がある。
経済的豊かさの原因
日本は経済的には間違いなく豊かだ。アメリカなどの国が軍事面を重視して、兵器の開発などに力を入れているときに、日本は経済にだけ力を入れた。外国の技術をうまくとり入れ、それに工夫を加えて改良し、車やテレビなど工業製品を輸出して富を手に入れた。また、日本型経 営と呼ばれている終身雇用、年功序列に基づく日本特有の経営方針によって、日本人は愛社精神を持ち、会社のために自分を犠牲にして働いてきた。それに、日本は中流意識が強いため、いっそう競争が起こりやすい。日本人の多くが少しでも豊かな生活を手に入れようとして、競争して働き、消費して、現在の経済的豊かさを実現した。
豊かさの問題点
今、そのような豊かさに疑問がもたれている。日本人は豊かさを得るために働きすぎている。日本型経営のために上司の命令に背けず、会社のために身を犠牲にしている。そのため、過労死などの問題があちこちで起こっている。しかも、日本ばかりが貿易黒字を記録し、諸外国と摩擦を起こして、非難されている。その一方、日本は、福祉が十分でない。利益を投資に回して、もうけることばかりを考えて、生活の質が追いついていない。そのために、働ける人間ばかりが力を持って、福祉は切り捨てられる傾向が強い。特に老人福祉は整備が遅れている。先進国にふさわしい福祉が望まれている。
精神的豊かさ
これからは、もっと生活の質を重視し た豊かさを求めるべきだ。そのためには、何よりも、価値観を多様化することが必要だ。今のような、消 費を豊かさとみなすのではなく、もっとさまざまな価値観を認め、お金や地位だけを求めるのではなく、さまざまな生き方のできる社会にする必要がある。そう することによって、選択の幅ができ、個人の好みと考え方によって、自分らしい生き方ができるはずだ。そして、自分らしい生き方のできる社会こそが、豊かな社会と言えるはずなのだ。
おさえておきたいキーワード
日本型経営
終身雇用、年功序列のために、社員が会社に長く勤めて、会社のために努力すれば、それだけの返りがある制度。社員は自分の会社に愛着を持ち、会社のために自分を犠牲にして働こうとする。
働きすぎ
日本人は努力次第で上層に登れると考えているために、少しでも働いて、上司に認められようとする。しかも、日本型営のため、会社のために犠牲になってでも働くのを当然だと思っている。そのために働きすぎになる。
消費社会
モノをたくさん持ち、消費財を買い求めることが豊かさだという考えが、日本人は強い。そのため、ブランドを買って、差をつけることに意義を見いだしている。
出題例1:人々の生きている充実感
現在の我が国では、社会や他者に対する無関心さなどで社会の凝集力が低下している。それは人々の生きている充実感をも奪っている。人々の生きている充実感は、社会の成員が互いに他者に関心を持ち、社会を成立させる要素を共有することで得ることができる。人間は、自分の存在意識を他人に認められてこそ生きている実感を持つことができる生き物である。よって充実感を得るためには、人間や社会への強い関心が求められている。
講評1
シンプルにまず解答を示しましょう。裏付け(理由)は、その次の文に書くなどです。
しっかり題意を読み取り、内容自体はいいので、「文や段落の構成」に気を付けましょう。問1、問2などのような問題は、前置きはいらない。
修正案1
人々の生きている充実感を得るためには、自分の存在価値を他人に認められることは最低条件である。それは、社会の成員が互いに他者に関心を持ち、社会を成立させる要素を共有することいえる。よって充実感を得るためには、人間や社会への強い関心が求められている。
出題例2:集団と個の人生
社会的凝集力とは、成員個々が引き付け合うことによって全体がまとまっていく社会の成員が備えている社会的磁力である。集団がまとめあげていくという目標を実現するためには、所属団員がその集団に対する所属意識を高く、自分の責務への行動意識を強く持つことかつ団員同士が互いに好感をもち、一緒に物事の達成に喜びを感じることで一人ひとりが意識を持って動くようになる。このような状態を集団に社会的凝集力があると言える。
講評2
題意に対して、キーセンテンスは抜き出せています。しかしながら、もっとシンプルな文の繋ぎを意識しましょう。
(例)社会的凝集力とは、~である。また、集団に社会的凝集力があるとは~の状態である。
社会的凝集力とは、成員個々が引き付け合うことによって全体がまとまっていく社会の成員が備えている社会的磁力である。集団に社会的凝集力があるとは、一緒に物事の達成に喜びを感じることで一人ひとりが意識を持って動くようになる状態である。この状態を保つためには、以下の2つのことを満たす必要がある。1つは、集団がまとめあげていくという目標を実現するためには、所属団員がその集団に対する所属意識を高いこと。もう1つは、自分の責務への行動意識を強く持つことかつ団員同士が互いに好感をもつことである。
添削2
2つの目の文が長い。1文を短くすることを心がけよう。
×集団がまとめあげていくという目標を実現するためには、所属団員がその集団に対する所属意識を高く、自分の責務への行動意識を強く持つことかつ団員同士が互いに好感をもち、一緒に物事の達成に喜びを感じることで一人ひとりが意識を持って動くようになる。
↓
○集団がまとめあげていくという目標を実現するためには、所属団員がその集団に対する所属意識を高いこと。また、自分の責務への行動意識を強く持つことかつ団員同士が互いに好感をもつこと。それらのことで、一緒に物事の達成に喜びを感じることで一人ひとりが意識を持って動くようになる。
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